復興をすすめる上での重要な6つのポイントを解説します。

復興を進める上での6つのポイント

災害復興に共通する事項

復興準備の目的は、復興時における問題点を事前に出来る限り軽減し、円滑な復興まちづくりと被災者の生活再建を実現することです。その前提として、過去の事例を咀嚼し「復興」という事業の傾向を教訓あるいは教科書として念頭に置いておくことが重要だと考えられます。

つまり、「災害復興を進めるときに共通する注意点は何か」を理解しておくことが必要だと言えます。

ここでは、これまでの災害復興のあり方とその問題点の傾向を通して見えてきた災害復興に共通する事項、「復興を進める上での6つのポイント」を当研究チームの視点として提示し、解説していきます。

6 points 災害復興の共通点

(1)どこにでも通用する処方箋はない

国内の災害復興事例や世界の復興資料をみると、場所・時代・災害規模・被災状況・地域社会の状況が変われば有効な処方箋も全く違うものになるという点が見えてきます。
災害復興において現実の問題を解決していくためにはその場所や時代の条件に応じた最善策をその都度探し作り上げていくことが必要であり、何かひとつ理想的なプランを用意しておいてそれをコピーのように適用していくというような進め方を目指すことは現実的ではありません。

(2)災害は社会のトレンドを加速させる

過疎化している地域では過疎化が加速し、それだけでなく逆に成長する地域では成長が加速する傾向にあります。四川地震の復興計画の例では、被災後に「復興計画展覧会」というものを開催し発展する未来を描きましたが、実際に2年半でこの計画が実現されることとなりました。

(3)復興は従前の問題を深刻化させて噴出させる

復興ではさまざまな問題が生じるが、この問題というのは新しい問題ではなく、今までにあった問題が深刻化して目に見える形で表出してきたものです。

(4)成功の必要条件:復興の過程でコミュニティの力を引き出せるかどうか

過去の災害復興で成功している事例を見ると、必ずコミュニティの力が引き出されており、コミュニティの力を引き出せるかどうかが「必要条件」になっていると考えられます。

(5)復興で用いられた政策は過去に使ったことのあるもの

過去の事例を見ると、復興の過程で用いられた政策はそれ以前に使ったことのあるもののバリエーションか、少なくとも構想されたことがあるもの、つまり既に「種」のあるものに限られていると言えます。四川地震の復興事業では非常にダイナミックに都市が変化しましたが、実はこれは2000年頃から実験的に行われていたものを全面展開したものでした。神戸の復興計画もまた、直前に考えられていた都市開発のマスタープランが全面的に表れてきたものであったことと分析できます。
ここから、社会のトレンドが一本調子で成長に向かっているときは過去に使った手法を使えばある程度成功するとも言えますが、一方で時代の変局点にあるときは依るべきものが無く困難に直面することが予想されるとも言えます。

(6)復興に必要な4つの目 +α バランス感覚

これは、時間軸で見たときに近くを見る目と遠くを見る目、あと空間軸で見たときの近くを見る目と遠くを見る目、そしてそれらのバランスが必要ということです。

時間軸で:近くを見る目/遠くを見る目
空間軸で:近くを見る目/遠くを見る目

時間軸で言いますと、おそらく被災者の多くは避難所生活をしている時は命の危険に晒されていると行ってもいいような環境で暮らしています、そして仮設住宅に入ったとしても明日の食事をどうするかという切実な悩みを抱えながら暮らしています。明日どうするかということを考えなければいけないという近くを見る目と、あと10年後20年後にこの街の将来をどうするか、あるいは孫の世代に何を残すかというようなことをまた同時に考えなければいけません。このバランスをとるのは非常に難しいことですが、しかしこのバランスを取ることを考えなければいけません。
一方、空間でいうと、「うちの敷地がどうなるか」という話とともに、集落全体がどうなるか、まちがどうなるか、あるいは今回の場合だと東北地域全体がどうなるか、といった小地域から第地域までを同時に考える視点も必要になってきます。このバランスが崩れると近視眼的過ぎる再建や、壮大すぎて地域の実情に合わない復興計画といった状況が生じてしまいます。
さらに「+α」として外部の目が考えられます。被災地の中だけでなく、外部の目を入れることで適度な刺激や、内部の人が思いつかなかった新しい視点から議論が活性化されることがあるという意味でこの「+α」が必要になってくるのではないかと考えられます。

現実の災害に直面したときに、これらの一般論としての6つのポイントを押さえた上で、よりベターな復興を進めるためにも、過去の事例や教訓を汲んだ上で準備を行うこと、「復興準備」を進めることが重要であると当研究チームでは考えています。