復興準備の背景
これまでの災害復興
これまでの代表的な大規模災害復興のあり方として、まず1995年の阪神大震災と2011年東日本大震災との事例を考察する必要があります。
阪神大震災の復興では、時代や経済背景もあり、被災街区を大規模に再開発し住民の入れ替わりを見込んだ開発型の復興がある程度通用したといえます。
しかし、それでもこうした都市計画の俎上にあがる「黒字地域」は被災地全体のわずか4%に過ぎず、残りの16.8%は法定外での復興事業として、残る79.2%つまり大半の地区は自力での復興に委ねられ、明確なビジョンを持てないままの再建が模索されました。
また、都市計画の対象となった地区でも区画整理事業に16年を要するなど、復興に要する時間の長さが問題となる局面が生じました。こうした阪神での問題の根元にある行政・法制度の枠組みは残念ながら現在も完全には善されていません。
一方、東日本大震災では、復興の方向性自体を模索する状況が生じています。
市町村を越えた規模の災害に対し被災地全体を将来どのように「人が生活する」地域として再興させていくか、被災者をいわば待たせたまま、そのビジョンを議論し始めなければならないという困難に直面しています。
これまでの災害復興はいわば「対症療法」的な性格が強く、問題=大災害が生じてから復興の議論を主な鵜というものでした。そのため大規模災害のたびにそれまで顕在化しなかった問題に脚光が当たり、復興の枠組みのあり方から議論をし直すという状況が続いてると言えます。
見えてきた問題点
少子高齢化・過疎化・財政難・経済低成長・・・・・現実の社会は常に変化し新しい側面を現し、既存の制度とのギャップが生まれていきます。
阪神大震災では「都市計画」というハード面と「生活/人間復興」というソフト面との対立が見られました。今回の東日本大震災では、災害対策基本法が前提とする「基礎自治体(市町村)を主体とした被災/復興」という枠組みが超広域の災害に対応できないという問題点が明らかになりました。
今後高確率での発生が予測される首都圏直下型地震でもまた、過去に無かった問題点がその被災/復興の過程で生じる可能性があります。
いま、復興の「枠組み」のあり方を規定する法律はありません。
災害が起こってから復興を模索する今のあり方には大きな不安が残ります。
「復興」を「準備」する
災害のあと素早く、しかし計画を押し付けることなく、地域に見合った復興を進めていく
・・・そこで必要となるのが「復興準備」という考え方です。
防災の前提として地震(災害)被害想定を準備しておくのと同様に、復興の前提として復興状況想定を準備しておく、という概念です。
それは都市の器を行政が作り上げ住民に提供するというトップダウン型の「計画」ではなく、地域/市民からの積み上げを基礎に据えた「ボトムアップ型」の復興を見据えた準備でなければなりません。これは日本の社会に適合した、世界でも稀な市民型の災害復興を進めていくことでもあります。
復興準備:その地域の特性に対応した復興状況をあらかじめ想定し、起こりうる問題を事前に把握し、復興を事前に準備する
―次節以降ではそのあり方について説明していきます。