事前準備

復興イメトレを行うにあたって、事前に主催者側がワークショップの前提となるいくつかの準備を行う必要があります。ここでは主に地震災害による被害の設定について説明します。

災害と被害の設定

災害の想定

まず対象とする災害の場所や規模を設定します。
活断層の分布に基づく震源モデルと、各地域の地形・地質に基づく地盤モデル、および全国地震動予測地図をもとにして、地震被害想定が各都道府県で既に用意されている場合はそれを用います。
地震被害想定が無く参考情報がない場合は震度6強程度(50〜80kine)を地表面地震動として想定します。

被害の想定

つづいて、復興イメージトレーニングの対象とする地区を選び、想定した災害によってその地区に生じる被害を具体的に図示します。一般的にメッシュなどの集計単位で算定されている地震被害想定を建物単位に落とし込んでいきます。
被害の想定
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市街地状況調査分析の例
まず市街状況を調査分析し地区内家屋の築年数や構造等の分布を設定します。
被害の想定-街道沿い
被害想定の作成例
70kine 程度の地震動
赤:全壊 黄:半壊
(旧街道沿い・駅前の地域の例 神奈川県)

ついで、対応するフラジリティカーブを用いて全半壊の割合・棟数を設定し、その被害(全壊・半壊)を仮想的に各家屋に割り当てた図面を作成します。

被害の想定-2種類の被災レベルを設定した例
2種類の被災レベルを設定した例
上:70kine 程度の地震動
下:100kine 程度の地震動+延焼+液状化
赤:前回 黄:半壊 黒:消失 紫:液状化
(耕地整理・ミニ開発による住宅地 千葉県)
地区全体で地震被害想定と整合性を保つよう注意しますが、議論の前提という位置付けであるため過剰に厳密に設定する必要はありません。
こうして作成した家屋ごとの被害想定図を基礎資料としてワークショップで提示します。

世帯の設定

ついで、地区内の具体的な生活像をイメージ出来るよう、被災者の世帯属性を詳細に仮想設定します。

対象地区の現地調査・国勢調査や日常の感覚を反映し、地区の典型世帯と復興弱者世帯(生活再建の困難が予想される世帯)とを描きます。

世帯の設定
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世帯の設定例

分析の例

属性設定の項目と設定例:

家族構成 世帯主63歳男性、妻60歳・母85歳・長女27歳と同居
居住地 旧街道沿いの商店街に居住
職業 自宅兼店舗で洋品店を経営する傍ら敷地裏側で木造アパートを経営
家計状況 主たる収入はアパート賃料、被災前は十分な所得、借入金なし・預貯金3,000 万円
建物被害 店舗兼住宅(築40年)全壊、賃貸アパート(築30年)半壊、地震保険なし
敷地状況 土地 150 坪所有、短冊上の敷地形状、評価額6,750 万円(坪45 万円)
居住歴 世帯主は居住歴63年
子世帯 長男30歳は都内在住の正社員、長女は自宅から大宮へ通勤する正社員
これは現実に居住してる世帯を調べたり選んだりするものではなくあくまで仮想的に描くものですが、現実感のあるモデルとなるように事前に主催者が、またはワークショップの中で参加者が設定します。